ラジオ時代の先輩ディレクター、コバジュンこと小林順さんが、54歳の若さでお亡くなりになりました。
2020年から闘病されていたとのことなのですが、そのことは周囲に伏せており、突然の訃報に呆然となったのが先月のこと。そして2024年3月20日（水）春分の日に有楽町ニッポン放送のお隣、ペニンシュラホテルでお別れの会が開かれたので、順さんが作っていた番組「ビーサイ」のパーカーを着て超高級ホテルに乗り込んでまいりました。
アニラジを教えてくれた恩人
「有楽町アニメタウン」「野川さくらのマシュマロ♪たいむ」「野中藍、ラリルれにちようび。」と、声優さんの番組を後に多く担当することになる私ですが、元々アニメにはさほど詳しくなく、ちゃんと全シリーズ網羅しているのは機動戦士ガンダムくらいで、文化放送のアニラジも聞かずに育ちました。そんな私にアニラジというものを教えてくれたのが、コバジュンさんでした。
2001年にニッポン放送の夜帯「LF＋R」に配属になった私は、「LF+RフライングNIGHT!」という番組でコバジュンさんの下につくことになります。ADの修行は1年昼ワイドでやっていたものの、いわゆる若者向けのバラエティ番組は初めてで、それはそれはご迷惑をおかけしました。
コバジュンさんは大学生の頃からオールナイトニッポンでADをやっていた「スーパーAD」上がりなので、BGMはこのアーティストが使いやすいとか、このCDの◯曲目にジングルにできる音がある、とか、ニッポン放送のCDルームを知り尽くしていて「このCD出しといて」というメモだけでもめちゃくちゃ勉強になったものです。
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロはこの番組の直前に起き、報道局からダッシュで会議室にコバジュンさんを呼びに行ったことは今でも鮮明に覚えています。
そんなある日、ニッポン放送で「東京キャラクターショーRADIO」という番組が始まり、コバジュンさんがディレクターを担当していたのですが、制作費カットだ！フリーのディレクターと制作会社を減らして社員が番組をやれ！と号令がかかったことがあり、フリーのディレクターだったコバジュンさんが番組を外れなくてはいけなくなりました。
ディレクターはニッポン放送の社員さんがやることになり、ADは雇えないけどミキサーの予算なら…と裏技でアシスタントで入った私に、番組を外れるコバジュンさんはあれやこれやとアニラジのコツを教えてくれたのです。
2003年、私は野川さくらさんと「マシュマロ♪たいむ」という番組をやり、コバジュンさんは初音島放送局という番組をやっていました。
2004年からは野川さくらさんと田村ゆかりさんが初音島放送局のレギュラーとなったため、同じ声優さんの違う番組を別々の局でやるという不思議な関係になり、アニラジの公開録音などがあって人手が必要なときは、声をかけてもらいよくお手伝いに行ったものです。茅原実里さんの渋谷公会堂イベントはすごい人だったなぁ。
その後、2005年にデーモン閣下（当時は小暮）のニッポン全国ラジベガスという夜の帯番組で私は木曜日のディレクター、コバジュンさんは作家、というポジションでご一緒することになります。
兎にも角にも、いろんな番組で山程お世話になった、それがコバジュンさんです。
さすがファイ仕切りのお別れ会
ペニンシュラホテルのホールで行われたお別れ会でしたが、イベントのプロが勢揃いして作るお別れ会はクオリティが違いました。
お花もとんでもない数が来ていましたし、アーティストから声優から各事務所からすごかったです。お別れの挨拶をマイクでしてくださったのは、西川貴教さん、緒方恵美さん、久保こーじさん、森久保祥太郎さんでした。
生い立ちから仕事履歴がすべてパネルになって展示されてるお別れ会、見たことないｗ
すごいなー。人に歴史あり。
お亡くなりになったのが福山雅治さんのお誕生日。どこまでカッコいいことするんだ。
会社、実家、そして今のお家から出てきた大量の思い出グッズが所狭しと並べられた展示スペース。
コバジュンさんのお父様はデザイナーで、デーモン小暮のオールナイトニッポンのフラッグをデザインされていたんですって。
生前「ニッポン放送は素材を全部捨てちゃうから、昔の素材は俺しか持ってない。貸すと返ってこないから貸さないｗ」とよく言っていたのを思い出しました。
旧型のサウンドプロデューサー。ラジオマンの憧れです。
順さんの道具箱。白いペンは「デルマ」と呼ばれるもので、6mmの磁気テープに編集点を書くものでした。そのあとハサミで物理的にチョキンと切って編集するんですよ。ニッポン放送では2005年くらいまで使われていました。
このオープンデッキも順さんの私物だそうで、自由に音出していいよ、というコーナーになってました。
順さんの素材箱。ここくらいまでは、懐かしいなーと見て回っていられたのですが、なぜか6mmのオープンテープを見ていたら涙が止まらなくなりまして、書いてる今もダメです。音素材の管理こそADの真骨頂だよなと。やっぱこの人すげえ（涙）。
作ったなあ、LF＋Rポッター。鼻水まで出てきた。
こういう貴重なテープが残っているのは全部順さんのおかげです。このあとどうなるんだろ。
番組ノートもしっかり取ってある。ラジオ愛がとんでもないなと。
会場BGMはコバジュンさん最後の選曲
こちらは入場時に配られた、コバジュンさんと同じ会社（株）ファイの放送作家石川さん、ディレクターの稲垣さんからの挨拶文。お別れ会の会場で流れているBGMは、なんと生前にコバジュンさんが選曲したものだというのです。ラジオに生きてきたディレクターが選んだ「最後の曲」。
せっかくなので、リストをここに残しておきます。
小林順プレイリスト「最後の曲」
秘密の花園／聖飢魔II
愛・おぼえていますか／飯島真理
すみれになったメモリー／南野陽子
朝もやの渚／クロード・チアリ
ONE／遊佐未森
Rain Forest／野田幹子
縁（Enishi）／小暮伝衛門
鏡の中のエトランゼ／南野陽子
BAD AGAIN〜美しき反逆〜／聖飢魔II
星のラブレター／THE BOOM
最後のHoly Night／杉山清貴
Bye Bye My Love（U are the one）／サザンオールスターズ
少女の王国／筋肉少女帯
Forget-me-not／尾崎豊
モッキンバード／加藤いづみ
ロビンソン／スピッツ
First Love／宇多田ヒカル
THUNDERBIRD／T.M.Revolution
イラヨイ月夜浜／大島保克
夏の終わり／森山直太朗
さよならSummerDays／加藤いづみ
東京／福山雅治
everlasting…／茅原実里
恋音／GRANRODEO
Snow halation／μ’s
Dear..／南條愛乃
香菜、頭をよくしてあげよう／筋肉少女帯
スローバラード／RCサクセション
Endless story／瓜生明希葉
僕の好きなもの／お見送り芸人しんいち
CAPRICCIO ROMANTICO／ニニ・ロッソ
Bittersweet Samba／Herb Alpert & The Tijuana Brass
ONEWAY RADIO／ECHOES
私が書いたテープが出てきた
「MDやDATも出てきました」のコーナーでは、おそらくお気に入りで保存していたであろう番組同録がたくさんあって、その中で見たことのある文字が目に飛び込んできました。
「パトレイバーのANN-r」あ、私の字だ。この番組、吉田尚記アナがおそらく初めてべた褒めされた番組で「アニメのこと喋らせると、吉田はこんなに面白いのか！」と会社がざわついた記憶があります。順さんにも永久保存の番組だったんですね。
こちらも自分の字だ。おそらくデーモン閣下がお休みで、その代打でオーケンさんが特番をやったんだろうと。すいません、帯番組のスペシャルまでは覚えていませんでした。でもADは私だなこれ。
お別れ会は大同窓会となり、懐かしい人にたくさん会えた
順さんが54歳という若さだったため、来訪客も40代50代が中心。こんな時でもないと集まれない大同窓会になりました。まだみんな現役バリバリの業界人なので、今日の再会から新しい仕事や企画が生まれるかもしれませんし、ぜひそうなって欲しい、と奥様もご挨拶で話されていました。
私も10年以上会っていなかった方々にたくさん会えましたし、生きてるうちにまた皆さんとお仕事をしたいなと強く思った次第です。
ニッポン放送の檜原社長にも久々にご挨拶させていただいたんですが、「若い頃あんなに尖ってたのに、ずいぶん丸くなっちゃったわねえ」と、大きい会社で牙を抜かれてしまったことを一瞬で見抜かれてしまったので、不適切にもほどがあった時代を思い出そうと決意した一日でした。
コバジュンさん、本当に沢山ありがとうございました！ 生きてるうちは頑張ります！
【おまけ】コバジュンさんのホームページも見てね
そんなコバジュンさんが1997年から作っていたホームページ「残酷宣言」はこちら。
https://www2s.biglobe.ne.jp/~zankoku2/jun-main.htm
AD日記は必読です。
https://www2s.biglobe.ne.jp/~zankoku2/ad/radio.htm
お時間のある方は、AD物語 第１部最終回を読んでから、下の写真を見てください。これが本物の岩男潤子のオールナイトニッポンQシートです。ご実家に貼られていたんですね。（涙
https://www2s.biglobe.ne.jp/~zankoku2/ad/ad034.htm
コバジュンさんが沢山喋っていたのでこちらも埋め込んでおきます。2021年7月配信。
■お別れ会の裏話は、主催・ファイ社長の石川さんがビーサイ（Podcast）で語っております。
http://be-side.jp/podcast/2024/03/beside_your_life_vol9311.html
http://be-side.jp/podcast/2024/03/beside_your_life_vol9312.html
http://be-side.jp/podcast/2024/03/beside_your_life_vol9313.html
