このミステリーがすごい!大賞「名探偵のままでいて」放送作家小西さんが先生になった日

ギョーカイ話
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2023年第21回「このミステリーがすごい!」大賞作「名探偵のままでいて」。

名探偵のままでいて
宝島社
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著者の小西マサテル先生は「ナインティナインのオールナイトニッポン」などを担当する、ラジオの放送作家さんです。

私もラジオディレクター時代に笑福亭鶴光のゴールデンアワーや、知ってる!?24時などの番組でご一緒させていただいておりました。

ニッポン放送からミステリー作家が続々誕生

ニッポン放送から出た小説家といえば、「スマホを落としただけなのに」で第15回の「このミステリーがすごい!」で隠し玉賞をとった志駕晃さんがニッポン放送の社員ディレクター。

作品が映画化される様を見ていて、すごいなあ勅使河原さん(本名)と思っていたものですが、なんと有楽町から2人目の受賞者が出てしまいました。

本のお渡し会イベントがあるいうので即応募。見事サイン本をゲットして、さっそく読み始めます。

本は月に数冊読みますが、あくまで仕事のための読書でビジネス書ばかり。ミステリー小説を読むなんて何年ぶりのことでしょうか。

初心者でもスルスル読める短編集

なんの前情報もなくページをめくっていくと、いくつかのショートストーリーが収められた短編集でした。一話完結で謎を解き明かしつつ、各章に散りばめられた伏線を最終話で回収するスタイルで、スキマ時間に1話ずつ読めるのは現代人のスタイルに合ってます。考えられてるなあ。

主人公はミステリーマニアの女教師、「楓」。美人だけど趣味はミステリーでこれといって恋愛に興味なし。

そして本作の名探偵は楓の祖父で、幻覚や記憶障害などの症状がある「レビー小型認知症」を患った元小学校の校長先生。

普段は認知症のおじいちゃんが「楓。煙草を一本くれないか」の名ゼリフとともにフランスの煙草、ゴロワーズを吹かすと、一気に頭が冴え元の切れ者に。

認知症で見える幻覚すら利用して謎を解いていくという、実にビジュアルが浮かぶ解決シーンが展開されます。

名探偵コナンでいうと明智小五郎が麻酔で眠らされて、コナン君が副音声で謎を解くあれですな。

煙草を吸うところでBGMがカットインするところまで脳内再生されました。犯行の再現シーンは幻覚で表現するんですよねわかります。

楓先生の描写がとてもチャーミングで、周りの登場人物も魅力的。みなさん次々と事件に巻き込まれていくのですが、助け助けられ、恋も芽生えていきます。

セリフの掛け合いが「そうか、ラジオ台本と同じだよな」と思いつつ、あっという間に最後まで読んでしまいました。

作中にはミステリーの古典作品が散りばめられていますが、僕のように古典の教養がない&普段ミステリーを読まないような人でも十二分に楽しめました。

サイン会があったイマジンスタジオはなぜか犯行現場に

余談ですが、志駕晃さんも小西マサテルさんも明治大学の先輩。主人公の楓が神保町の本屋さんが好きなのは学校のそばだからかな、などと想像しつつ、先輩の背中を追いかけて次は僕が作家デビューするしかないなと思っております。

僕も文字を書くことを生業としていますが、取材記事と違ってゼロから物語を生み出せる人ってすごいなと。どんな脳内なんだろう。

ということで「このミステリーがすごい!」2023年大賞作「名探偵のままでいて」、ラジオ好きもミステリー好きもそうでない方も、ぜひ一度手にとってみてください。

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