「地域を超えたメディアになりたい」 コミュニティFMのパーソナリティが抱えるラジオの危機感

ギョーカイ話
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北海道帯広市にあるコミュニティFM局、FM-JAGA(エフエムおびひろ)。地元の十勝毎日新聞社グループのFM局で、他に新聞社、ケーブルテレビ、タウン誌などのメディアがあります。

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先日、グループの勉強会に招かれ「ラジオとインターネットの融合とその可能性」についてお話してきたのですが、せっかく行ったのに取材しなきゃもったいない!ということで、パーソナリティーの高木公平さんに地方局の現状とこれからのラジオについてインタビューしてきました。

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-まずは今回、東京から勉強会に人を呼ぼうと思ったきっかけは?

高木:インターネットを、ラジオに活かしたいと思ったからです。インターネット放送で、十勝の外でも放送を聴けるようになりましが、電波エリア外のリスナーはまだ多くはありません。ウェブサイトを開設しブログを書いていますが、新たなリスナーを増やしたり、マネタイズに活かしたりといった効果がなかなか現れませんでした。そこで、ラジオ局での勤務経験がある田野さんに、放送後のフォローや、マネタイズの方法を勉強したかったんです。

-高木さんはどうしてラジオパーソナリティになろうと思ったのですか?

高木:地域のことを外に発信する仕事がしたかったんです。”町おこし”ってやつですか。札幌に住んでいる時に、たまたまFM-JAGAの話をもらいまして。

-いきなり、マイクの前で話す仕事です。

高木:私は本州出身の上、ラジオ自体をあまり聞いたことがなかったので「えっ」と思いましたが、地域のこと、FM-JAGAのことを調べたら、帯広が農業を中心とした個性的な場所であることと、十勝毎日新聞社グループがいろいろなメディアを持っていることがわかり、時代の流れとしては外向きに発信できるタイミングが来るだろうと思ってこの世界に飛び込みました。それが2012年の3月です。大学や前職で外国人と関わることが多く、北海道人気を実感していたのも大きかったですね。

-入社してすぐに番組を担当したのですか?

高木:十数年ぶりの正社員としての採用だったようで、大事に育ててもらいました。

番組に出るようになったのは去年の夏からです。しばらく休みを取るスタッフのピンチヒッターということでデビューし、その後半年番組をやり、今年4月から金曜日に新番組を持たせてもらいました。

-ラジオの仕事をしてみて、驚いたことはありましたか?

高木:仕事の流れを理解するのが難しかったです。

以前は自動車部品メーカーに勤めていたので、モノを作ってモノを売るという仕事でした。スタッフそれぞれの役割はモノを追っていけばわかります。どのような人が来ても仕事ができるように業務の「見える化」も進んでいます。しかし、FM-JAGAの場合は、番組の時間になったらデスクに座ってた人がスッとスタジオに行って喋り出すんです。びっくりしました。

頭のなかでどんな作業をしているのかを理解するのがすごく難しかったですね。いろいろ聞いて教えてもらいましたが、それが一番戸惑いました。

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-ワンマンスタイルだとそうなりますよね。一般的なラジオ番組は複数人で番組を作るので、打ち合わせの内容が聞こえてきたり、誰が何してるのかくらいは分かるんですけど…。

高木:そうなんですね。

あとは、サービス(放送)を届けるリスナーから直接お金をもらっているわけじゃないというのも不思議な感じがしました。いままでモノを売る企業で働いていたので、聴取者に番組を喜んでもらうことが必ずしも直接収入につながる訳ではないですよね。

-なるほど。

高木:自分が「おもしろい」と思うことを企画して、お金も掛けて実行したい。でもラジオを取り巻く苦しい現状から、「予算が集まらない」、「赤字になったらどうする」となれば、企画に相当な準備をして、その「おもしろさ」と「採算性」を周囲に十分説得しないと実現は難しいです。ゆっくりと実績を積むことももちろん大切ですが、スタッフのみんなが「おもしろい」と思うことを「インパクトある大きさ」でやりたいですね。

-そんな状況をネットの活用でなんとか打開したいと

高木:はい。番組の面白さや、DJの魅力はもちろん、媒体の力を示すはっきりとしたものが必要だと思います。ネットは数字(アクセス数)が出ますよね。(※FM-JAGAは細かな聴取率を出していない)

ラジオの強みである双方向性はネットとかぶる部分が多く、上手くネットを活用できればラジオの長所をさらに伸ばすことができるのではないかと思います。さらに、ネットは拡散力があり、地域も越えていきます。アクセス数を増やし、インターネット放送のリスナーが増えたらいいですね。

-広告は厳しいですか?

高木:決して楽な状況ではないと思います。営業担当の方に話しを聞くと、企業の担当者がラジオ好きじゃないと話が先に進まなかったり、広告効果を具体的な数字で示さないと、支社の担当者から良い反応を得ても、本社を説得するのが難しかったりする場合もあるようです。

十勝らしいメディアでありたい

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高木:ネットを使えば、誰でも情報発信ができるようになりました。しかし、ラジオ局のパーソナリティーが伝えるからこその信頼度があると思います。リスナーに顔が見える、親しみを持ってもらうということを大切にしながら、良いものを紹介できるメディアになれたらと思います。

また、クライアントは、十勝だけでなく、十勝以外の企業とも一緒にお仕事をさせて頂けるようになりたいです。

そのために、北海道・十勝の放送局だから「こういう放送なんです」と言える、十勝らしいラジオ局でありたいと思っています。

今年に入ってからFM-JAGAはロゴを変えました。イメージカラーは大地の土を表すブラウン、豊かに畑を彩るディープグリーン、実りのゴールデンイエロー。十勝の、農業の町のラジオ局だとわかってもらいたいのです。

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ロゴから周波数や「FM」という文字を取ったのも、これまでの“ラジオ”というメディアのみにこだわらず、この町を通して世界に発信したいという想いからです。

たとえば、十勝が「地産地消」や、「食の安全」を発信するにふさわしい地域であり、FM-JAGAがその価値を伝えている放送局であれば、十勝以外のクライアントに、FM-JAGAを通して全国に向けてメッセージを伝えたいと思って頂けるかもしれません。農業だったらこの町、帯広なんだ、十勝なんだ、JAGAなんだというふうに知ってもらいたいですね。

まず自分の番組をサンプルにして、事例を作っていきたいと思っています。

-十勝毎日新聞社さんは歴史のある会社で、さらに地方ではメディアは大企業で信頼もあります。

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高木:まだ私に会社を動かす程の説得力はありませんが、会社からは、ネット活用の事例づくりに一定の期待はしてもらっています。頑張って実績を作っていかなければなりません。

-昨日、十勝毎日新聞社の林浩史社長ともお話させていただきましたが、「まだ食えちゃってるから、危機感が足りない」とおっしゃってました。

高木:先輩は皆さん、経験豊富です。その経験を活かす形を作っていくことが大切なのかなと感じています。

-高木さん、若く見えますけどもう35歳なんですね(笑)

高木:そうなんです(笑)インターネットを使いこなし、意欲が有り、想像力が豊かな若者が会社に入ってくれたらうれしいですね。

-若者は地元に残らないのですか?

高木:十勝には畜産大学、短大が1校ずつ、専門学校が何校かありますが、進学のために札幌や東京に行く子が多いようです。でも、北海道の人は地元に戻りたいと思う人が多いようです。外での経験を十勝で活かして欲しいですね。

町を外とつなげるメディアが必要

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高木:外とのつながりが作れれば、グループ内での「ラジオ」の存在価値がグッと上がると思います。町は外とつながることを求めています。十勝の商品を知ってもらいたい。観光客に来てもらいたい。外に対して町をPRして売ってくるメディアが必要です。ボクも外の人間だったから、十勝の情報発信が足りてないというのは実感としてあります。

大学や前職で外国人との関わりもあったので、外国人が求めている情報のニーズも感じています。北海道は情報発信が足りない。足りないというか連携が取れてなくてパラパラしていると思います。

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-北海道というと札幌、函館、あとどこだっけ…というのが正直なところです。

高木:北海道って大きいんです。アイルランドと同じくらい、十勝だけでも秋田県程の広さです。帯広から札幌まで車で2時間半。車で大阪から静岡まで行くのと変わりません。

主要駅に行くと各行政の出しているパンフレットが並んでいて、観光客はどのように楽しんでいいのかわかりにくいと思います。それをまとめて十勝の楽しみ方を提案できるパーソナリティーになりたいと思います。

大地でつながれるって羨ましい

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高木:私は福井県美浜町、原発の町の出身です。あくまでも僕の感想ですが、いろんな利害があり町民が1つになるのが難しい町だと思っています。だから大地で繋がれるってほんとうに羨ましいなって。十勝は農業でオンリーワンになれるんです。

-これからラジオを使ってやりたいことは?

高木:日本各地いろいろな所に住みましたが、十勝ほど農業を主とした魅力的な町は他になかった。この魅力をちゃんと伝えたいです。ラジオはもちろん、インターネットを使ったり、イベントを催したりしたいですね。

個人的には2020年、オリンピック開催のタイミングで国内観光地のどのポジションにいるかがとても大切だと思います。そんなに沢山の観光地がお客さんに選ばれるわけじゃない。だから急ぎたいんです。あと6年しかありません。

-ありがとうございました。

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◇高木公平アナウンサー 公式プロフィール
◇関連リンク FM-JAGA


初めて行った帯広。大地がとにかく広くて、美味しいものが沢山あって、素敵なところでした。地方のコミュニティFMだからこそ、インターネットを使って全国に発信したい、地元の良さを伝えたい!という情熱にあふれる高木さん。番組ブログやソーシャルの使い方などにも頭を悩ませていました。

ラジオだけにとらわれない情報発信、今後も注目していきたいと思います。そして、また行きたい帯広。だって美味しいお店たくさんあるんだもん。
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十勝・足寄町出身といえば松山千春さん。番組ADを3年ほどやらせて頂きました。素敵な方です。そんな千春さんのこの歌の意味が、十勝の大地を踏みしめて少しだけわかった気がしました。松山千春「大空と大地の中で」

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